2022年度 土木学会土木情報学論文賞受賞
2021年度 第34回 日本道路協会日本道路会議優秀論文賞受賞
車種も判別しながら通行車両台数を測定でき、道路のメンテナンス・管理などに役立つ、AIを活用した交通量調査システムを開発しました。今後、曜日、時間帯、天気などの蓄積された情報に紐づけることによって、より精密に渋滞を予測することも可能になると考えます。
本技術の最終目標は断面交通量および交差点交通量の計測の自動化です。断面交通量の計測には、調査地点付近に設置したビデオカメラの映像を解析して車両の検出や分類、計数を行う車両解析技術が必要です。一方、交差点交通量の計測は、前述の解析技術を交差点の流入、流出地点に複数適用するなどの改良が必要となることが想定されます。実現にはまず双方のベース技術である車両解析技術の考案が必要と言えます。
具体的には、
①交通量を計測する各地点にカメラを設置
②撮影した映像に、車両を計数するための断面線を設置
③車両の各部位を識別することで、小型車か大型車かの車種を分類
このようなカメラ映像を用いた車両解析技術の実現には、AIを用いた高精度な車両の検出と車種の分類技術が必要です。
一般的なAI交通量調査技術では、車両を個別に認識する手法として、Object DetectionとInstance Segmentationが活用されています。しかし、これらの技術をそのまま適用するだけでは、車両の検出漏れに加え、軽自動車をトラックとして誤認識する場合があります。これは、Object DetectionとInstance Segmentationが物体認識に特化した手法であり、特徴が類似する物体の分類に不向きなためです。
また、セダンタイプの車両やトラックは分類に成功していますが、ワゴン車や軽トラックを大型車として誤分類することがあります。そこで本製品では、車種ごとに車両の各部位の形状や色が異なることに着目し、部位を識別子とした車種分類技術を開発しました。
本製品の特長
実際の調査員が車種の分類時に着目する8種類の車両の部位(正面、背面、左側面、右側面、上面、タイヤ、フロントガラスとナンバープレート)と背景を識別し、これらの画像を車種分類の識別子として車両画像とともに学習することで、車種の分類精度向上に成功しました。
また、昼間の映像に対して高精度に計数できる一方で、夜間になると実務で必要とされる計数精度に至っていないことが報告されています。下記の車種分類技術と24時間交通量調査技術の3つの技術を開発し、それぞれの技術を実際の交通量調査時に撮影した映像に適用し、高精度な計測を実現しました。
● 断面通過車両を認識する技術
車両の検出漏れに対して前後のフレームの検出結果により補完することで検出精度の向上を図ります。
● 部位を識別子とした車種分類技術
車両各部位の形状の特徴から車種の分類が可能という点に着目して車種の誤認識の課題を解決し、車種の分類精度を高精度化しました。
AIを用いて昼夜を問わず適用可能な技術により、昼夜を問わず、高精度に交通量計測が可能になりました。